長年にわたりA級順位戦に君臨し、第一線で戦い続けた中原に転機が訪れたのは2008年5月のことでした。公式戦の対局中に体調不良を訴え、脳梗塞と診断されて緊急入院。一時は命も危ぶまれましたが、懸命なリハビリを経て盤上への復帰を果たしました。
しかし、病の影響は勝負師としての感覚に影を落とします。2009年3月、中原は61歳で現役引退を電撃発表しました。引退の記者会見で語られた理由は、「納得のいく将棋が指せなくなった」という極めて潔いものでした。
妥協を許さない真のトッププロとしての美学を貫いた引退表明に対し、ファンや棋界関係者からは惜しみない称賛が送られました。引退と同時に、永世名人規定に基づき「十六世名人」を襲位。名実ともに将棋界の最高峰のレジェンドとしてその名を刻みました。