『もののけ姫』での伝説的な名演を経て、宮崎駿監督と美輪明宏の信頼関係はさらに強固なものとなりました。その絆が結実したのが、2004年公開の映画『ハウルの動く城』における「荒地の魔女」役です。
荒地の魔女は、物語前半では主人公ソフィーに呪いをかける恐ろしい敵として登場しますが、サリマンによって魔力を奪われた後は、欲望に忠実でありながらどこか憎めない無垢な老婆へと劇的な変化を遂げます。美輪明宏はこの極端な二面性を、声のトーンや息遣いだけで鮮やかに表現してみせました。
「若い男の心臓」に固執する妖艶な魔女の姿から、カルシファーを抱きしめて「きれいな火」と無邪気に呟く老婆の姿へのグラデーションは、美輪明宏の演技力の真骨頂です。『もののけ姫』の神聖なモロの君とは全く異なるアプローチでありながら、ジブリ史上に残る強烈なキャラクター像を創り上げ、声優としての評価を不動のものにしました。