猟友会と行政・警察の信頼関係を決定的に破壊した象徴的事件が、北海道で起きた砂川市のライフル銃所持許可取消問題をめぐる長期の裁判闘争です。
この裁判の経緯は2018年8月に遡ります。砂川市街地近くに出没した体長約1.4メートルのヒグマに対し、砂川市と地元警察署の要請を受けた地元猟友会支部長の男性ハンターが出動しました。男性は警察官や市職員立ち会いのもと、高さ約8メートルの土手(バックストップ)に向かってライフル銃を発射し、見事に駆除を成功させました。
ところが事態は急暗転します。駆除から数か月後、北海道公安委員会(道警)は「跳弾が背後の民家に届く危険性があった」として、男性の銃所持許可を取り消す処分を下したのです。要請を出した当事者である警察が、現場で発砲を容認しておきながら、後からハシゴを外してハンターを処分するという前代未聞の事態に、全国の狩猟関係者は戦慄しました。
男性は処分の取り消しを求めて札幌地裁に提訴。2026年の一審判決では「建物に弾が届く危険性はなく、公安委の判断は裁量権の逸脱・乱用」として男性が全面勝訴しました。しかし、2026年の札幌高裁判決では一転して「跳弾の可能性を完全に否定できない」として処分を妥当とする逆転敗訴が言い渡され、最高裁へ上告される事態へと発展しました。
「行政の要請で市民を救った功労者が、犯罪者同然に銃を奪われる」というこの司法判断は、全国の猟友会に「もう行政の頼みで市街地に出動することはできない」という強い警戒感を植え付けました。自治体からの委託料トラブルや責任の所在をめぐる不信感は、この一件によって修復不可能なレベルまで拡大したのです。