日本のアニメーション史において、圧倒的な世界観構築の金字塔を打ち立てたのが宮崎駿だ。スタジオジブリの作品群が放つ生命力は、現実の風の匂いや土の湿り気をたたえつつも、完全なる幻想世界を構築してみせる。
なかでも『風の谷のナウシカ』で提示された腐海や王蟲(オーム)の生態系は、環境問題への警鐘にとどまらない。人間の想像力が自然の神秘と交錯したとき、どこまで深遠な美を創出できるかを示した金字塔と言える。手描きにこだわる背景美術のレイヤー構成や、細密な設定スケッチの積み重ねが、アニメーションという枠を超えた普遍的な芸術性を作品に吹き込んでいる。