物流現場における事故事例を分析すると、最も骨折や挫傷を招きやすいのがハンドリフト後進走行の危険性を軽視した結果による足の轢過事故です。
作業者が進行方向に背を向け、ハンドルを両手で手前に引きながら後ろ向きに歩くスタイルは、視界が進行方向に向かないばかりか、つま先やかかとが自車のロードホイール(前輪車輪)やステアリングホイールに巻き込まれる重大なリスクを孕んでいます。万が一足元につまずいたり床の段差に足を取られた場合、作業者の体の上に1トンを超える荷物がそのまま乗り上げてきます。運搬時の大原則は「進行方向を向き、両手でハンドルを押して進む(前進押し歩行)」ことです。
さらに現場で厳格な制限が求められるのがハンドリフトの坂道運搬ルールです。原則として、傾斜角が3度以上あるスロープや坂道では手動ハンドリフトによる運搬作業自体を避けるべきとされています。どうしてもスロープを通過しなければならない場合、作業者は「常に坂上側(高い位置)」に立つのが鉄則です。
上り坂では荷物を前にして作業者が後ろから押し上げ、下り坂では荷物を先頭(坂下側)に向け、作業者は坂上側からハンドルを保持してゆっくりと後退しながら速度を制御します。作業者が坂下側に立つと、制動が利かなくなった瞬間に重量物の下敷きになり、致命的な挟まれ事故につながります。ハンドリフトの事故防止と安全教育を社内で実施する際は、この「押し歩き原則」と「坂道での立ち位置」を実技形式で徹底指導することが肝要です。