太皷谷稲成神社の信仰において、とりわけ熱心に語り継がれているのが「失せ物発見のご利益」です。SNSや参拝者の体験談を検証すると、「紛失して諦めていた貴重品が参拝直後に見つかった」「長年探していた重要書類が思いがけない場所から出てきた」といった報告が数多く寄せられています。
この信仰の原点には、江戸時代に津和野藩の蔵の鍵を紛失した蔵番が、処刑を覚悟して太皷谷稲成神社に七日七夜祈願したところ、無事に鍵が見つかって命を救われたという有名な伝承があります。心理学的・行動認知の観点から見れば、朱塗りの鳥居を一段一段踏みしめ、雑念を払って神前で祈りを捧げる行為は、焦燥感で狭窄していた視野をリセットし、記憶の再想起を促す精神的アンフリーズの効果をもたらすとも解釈できます。
現代の参拝者からは、失せ物のみならず、「就職や資格試験の願望成就」「事業承継や商売の好転」に関する感謝の口コミが圧倒的多数を占めています。形骸化した儀礼ではなく、自分自身の目標や決意を神前で明確に言語化する参拝体験が、結果として行動変容を後押ししている側面がうかがえます。