かつて少年時代の稲葉浩志は、周囲を和ませるおとなしく真面目な性格だったという。邦子さんの記憶に残る幼い日の息子は、宿題や勉強に黙々と取り組む一方で、家の中や車の中でラジオから流れる音楽を口ずさむ大の歌好きでもあった。横浜国立大学教育学部に進学し、一時は数学教師の道を志していたというエピソードも広く知られている。
「人前で目立つタイプではなかった」と語る邦子さんだが、息子のうちに秘めた情熱と誠実さを誰よりも理解していた。厳しくも温かい家庭環境で育まれた真摯な姿勢は、後に国民的ボーカリストとして成功を収めた今も一切ブレることがない。幼少期からの真っ直ぐな生き方が、彼の圧倒的な歌詞表現やボーカルスキルの根幹を形作っているのだ。