焼きおにぎりを作ろうとして、フライ返しを入れた瞬間に平たく潰れたり、米粒が散らばってチャーハンのようになってしまった経験を持つ人は少なくありません。料理科学の視点から分析すると、この現象には米に含まれるデンプンの結着力と水分の関係という明確な物理的理由が存在します。
ご飯粒同士がくっついているのは、加熱によってデンプンが水分を吸って糊化(アルファ化)し、粘り気を出しているためです。しかし、多くの人がやってしまいがちな「温かいご飯にあらかじめ醤油やみりんを混ぜ込んでから握る」という手法は、調味料の水分と塩分によって米粒同士の結着を弱める最大の引き金になります。塩分にはタンパク質やデンプンの構造を緩める性質があり、余計な水分が米の表面に介在することで、握った時の密着度が大幅に低下してしまうのです。
さらに、フライパンに置いた直後にいじりすぎることも致命的な失敗を招きます。加熱初期の米は熱によって一時的に柔らかくなり、もっとも外圧に弱い無防備な状態にあります。ここで何度も裏返したり位置を変えたりすると、表面に保護膜(焼き目)が形成される前に内部から亀裂が走ります。崩れを防ぐ鉄則は、「味付けをしていない白飯を硬めに握り、表面の水分を飛ばして硬化膜を作るまで絶対に触らない」という点に集約されます。