推定16〜20シーベルトという、一般的な致死量を遥かに上回る放射線量を至近距離で浴びてしまった作業員の大内浩氏。病院へ搬送された直後、顕微鏡で血液成分を観察した医療陣は絶句した。細胞の核内に収まるべき23対の染色体がことごとく破壊され、バラバラに砕け散っていたからである。
染色体は生命の設計図だ。それが失われたことを意味するのは、新たな細胞が一切作られないという残酷な現実だった。まず白血球が激減し、免疫系が崩壊した。続いて皮膚が再生を止め、日を追うごとに赤く剥がれ落ちていく。消化管の粘膜も失われ、毎日数リットルにおよぶ下血と体液の滲出が始まった。身体が内側と外側の双方から崩壊していく凄惨な状況の中、医療チームは必死の治療を続けた。