イヌサフランが「危険な美しさ」と評される最大の要因は、全草に含まれる「コルヒチン」というアルカロイド系の猛毒成分です。球根はもちろんのこと、花、葉、種子に至るまで高濃度の毒を含有しており、加熱調理しても毒性は一切分解されません。
コルヒチンは細胞分裂の際に紡錘体の形成を阻害する作用を持ち、一度体内に吸収されると全身の細胞分裂を停止させます。誤って口にした場合、数時間から半日の潜伏期間を経て、極めて凄惨な症状が段階的に現れます。
- 初期症状(摂取後2〜12時間):激しい嘔吐、水のような下痢、激しい腹痛、口腔内や喉の灼熱感。
- 進行期(摂取後24〜72時間):多臓器不全、肝機能障害、急性腎不全、血小板減少による全身出血。
- 末期:中枢神経麻痺、呼吸不全、心停止。意識が清明なまま呼吸麻痺に陥るケースも報告されています。
コルヒチンのヒトに対する致死量はわずか数ミリグラムと極微量であり、現代医学においても確立された特異的解毒剤が存在しません。対症療法による集中治療を行っても救命できない事例があり、植物毒の中でも最強クラスの危険度を誇ります。