日本国内における『ファインディング・ニモ』のメガヒットを語る上で欠かせないのが、卓越した日本語吹き替え版のクオリティです。キャラクターの骨格に完璧に合致した声優陣の演技は、作品の魅力を何倍にも引き上げました。
父マーリン役を務めた木梨憲武氏(とんねるず)は、常に神経を尖らせ、心配性で早口になってしまう父親の切迫感を絶妙なニュアンスで表現しました。コミカルな演技の中に、妻子を失った過去のトラウマと息子への痛切な愛情を滲ませる演技力は、ディズニー吹き替え史に残る名演と高く評価されています。
そして、短期記憶障害を抱えるドリー役を演じた室井滋氏の存在感は唯一無二です。突拍子もない言動の裏にある純真さや、マーリンと一緒にいたいと願う切実な心情を、独特のハスキーボイスと卓越したリズム感で体現しました。2016年に公開された続編『ファインディング・ドリー』でも両氏のタッグは継続され、タコのハンク(声:上川隆也氏)やジンベエザメのデスティニー、シロイルカのベイリーといった新キャラクターたちと共に、記憶と家族をめぐる重厚な物語を紡ぎ出しました。