インターネット上の掲示板やSNSでは、Instagramウェブ版にまつわる根拠のない言説がまことしやかに語り継がれています。その最たるものが、「ブラウザのシークレットモード(プライベートブラウズ)を使えば、ストーリーズを見ても絶対に足跡がつかない」という言説です。
この言説は、Webの通信プロトコルと認証の仕組みを完全に無視した危険な誤解です。シークレットモードが保護するのは「閲覧している端末内に閲覧履歴やCookieを残さない」というローカル環境のプライバシーに過ぎません。シークレットモードであろうと、自身のアカウント名とパスワードを入力してログインした時点で、サーバー側とのセッションが確立されます。その状態でストーリーズを読み込めば、サーバー側のデータベースには正規のAPIリクエストとしてアカウントIDが送信され、閲覧者リストに名前が刻まれます。
また、「別のアカウントを作れば完全匿名で相手を監視できる」という考え方にも大きな落とし穴が存在します。Meta社のセキュリティアルゴリズムは、同一のIPアドレス、ブラウザのフィンガープリント(端末情報や画面解像度などの固有構成)、連絡先の同期状況などを多角的に解析しています。その結果、新設した閲覧専用の別アカウントであっても、相手の「知り合いかも」欄やおすすめアカウントに自分の本名や本アカウントがサジェストされてしまい、かえって怪しまれるという皮肉な結末を迎えるケースが後を絶ちません。