法隆寺の国宝「玉虫厨子」の謎|羽が使われた理由と見どころ徹底解剖

法隆寺の国宝「玉虫厨子」の謎|羽が使われた理由と見どころ徹底解剖

法隆寺の国宝「玉虫厨子」の謎|羽が使われた理由と見どころ徹底解剖に関する専門家の意見を分かりやすく解説いたします。

玉虫厨子が美術史上で別格の評価を受ける最大の要因は、須弥座の側面に描かれた漆絵・密陀絵(みつだえ)による仏教説話画にあります。とりわけ名高いのが「捨身飼虎図(しゃしんしこず)」と「施身聞偈図(せっしんもんげず)」です。

1. 捨身飼虎図(須弥座右側面)

『金光明経』に登場する釈迦の前世物語(ジャータカ)を描いたものです。飢えのために自らの子を食べる寸前だった母虎とその7匹の子供を見かねた薩埵王子(さったおうじ=釈迦の前世)が、自らの身を投げ出して虎に与えるという自己犠牲の崇高な場面が表現されています。

特筆すべきは、「異時同図法(いじどうずほう)」という高度な物語展開技法です。画面の上部に「衣服を脱ぎ捨てる王子」、中央に「崖から身を投げる王子」、下部に「虎にその身を食べさせる王子」という3つの時間軸の出来事が、美しいS字の山岳構図の中に違和感なく一本の絵として描かれています。

2. 施身聞偈図(須弥座左側面)

『涅槃経』に由来する雪山童子(せっせんどうじ=釈迦の前世)の物語です。童子が山中で修行中、羅刹(鬼)が唱えた仏の教えの「前半の句」を耳にします。続きの「後半の句」を聞きたいと願う童子に対し、羅刹は「飢えているため人の肉しか受け付けない」と返答します。童子は残りの教えを聞く約束と引き換えに、自らの肉体を崖の上から鬼の口へ投げ出す決意をします。飛び降りた瞬間、羅刹は帝釈天の正体を現し、空中で童子を受け止めるという劇的な救済劇が描かれています。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。