声楽や音声生理学の観点では、一般的に「体格が大きいほど肺活量や共鳴腔が広く、声量が大きくなりやすい」とされています。にもかかわらず、身長147cmの天童よしみがホール全体を圧倒する声量を誇るのはなぜでしょうか。長年の歌唱指導者や音声専門家の分析、本人の過去の証言から、以下の5つの決定的な要因が浮かび上がります。
第一に、徹底的に鍛え上げられた横隔膜のコントロール力です。天童よしみは幼少期から父の指導のもと、厳しい歌唱訓練を重ねてきました。息を吸い込んだ瞬間に横隔膜を限界まで下げ、腹圧を一定に保ちながら微細に息の流量を制御する技術は、世界的なオペラ歌手にも匹敵します。
第二に、「低重心」による身体の安定性です。147cmという小柄な身長と豊かな体躯は、力学的に重心が低く、地面を捉える踏ん張りが効きやすいという利点を持っています。骨盤をしっかりと立て、下半身の筋肉をアンカー(錨)のように固定することで、上半身の余計な力みを完全に抜き、喉に負担をかけずに爆発的なエネルギーを声帯へ伝達させています。
第三に、口腔・鼻腔・咽頭腔をフル活用した共鳴技術です。小柄であっても、頭部や喉の内部にある空間(共鳴腔)を最大限に広げるフォームを完璧に体得しています。マイクを通さずとも遠くまで通る「芯のある高音」と「深みのある中低音」は、響きを体内で何倍にも増幅させるフォルマント(特定の周波数成分)のコントロールによるものです。
第四に、浪曲・民謡で培われた「胴声(どうごえ)」の技術です。出身地である大阪府八尾市は河内音頭の本場。喉先だけの小手先ではなく、腹の底から声を押し出す伝統的な発声法が骨の髄まで染み込んでいます。
第五に、徹底した呼吸筋と背筋のトレーニングです。過去の特番インタビューでも明かされている通り、天童よしみは日常的にウォーキングやストレッチ、呼吸トレーニングを欠かしません。歌うための筋肉が極限まで最適化されているからこそ、年齢を重ねても声量が衰えないのです。