白鳥沢を長年率いる名将・鷲匠鍛治(わしじょう たんじ)監督の存在抜きに、このチームを語ることはできません。鷲匠監督の指導理念の根底には、自身が現役時代に「小柄であること」を理由にセッターへの転向を強いられ、バレーボール界の理不尽な壁に阻まれたという痛切な原体験が存在します。
「シンプルかつ純粋な高さとパワーこそが、コート上で最も揺るぎない力である」。その信念を体現したのが牛島若利という存在であり、鷲匠監督にとって牛島は自らのバレーボール観の集大成でした。
春高予選決勝で烏野高校の小柄なスパイカー・日向翔陽に敗れた際、鷲匠監督は自らの信条を真っ向から否定されるような衝撃を受けます。しかし、名将の真価はそこからの変化にありました。後の宮城県1年生選抜強化合宿において、無断で潜り込んできた日向に対し「ボール拾い」としての居場所を与え、彼がコート外からバレーの全体像を学ぶ契機を作ったのです。
さらに原作終盤では、日向のブラジルビーチバレー修行を陰ながら支援するパイプ役を担っていたことも判明。自らの哲学に固執する頑固者でありながら、バレーボールに対してどこまでも誠実であり、若者の可能性を真摯に見つめる指導者としての懐の深さが読者の胸を打ちました。