給付金請求の実務において、請求希望者が直面する最大の難関が「幼少期の母子健康手帳(母子手帳)の紛失」です。昭和30〜40年代生まれの世代では、度重なる転居や親の他界によって母子手帳が手元に残っていないケースが過半数を占めます。しかし、現場の司法実務では、母子手帳がなくても代替手段によって認定を勝ち取ることが可能です。
厚生労働省および裁判所が認めている代表的な代替証拠には、自治体や小学校に残存する記録の活用があります。
- 予防接種台帳・学籍簿の開示請求:市区町村役場や学校教育委員会に保管されている学籍簿や健康診断票の記録。
- 接種痕(ツベルクリン・種痘)の医師鑑定:皮膚科医や法医学医による上腕部の接種痕測定と意見書の作成。
- きょうだいの母子手帳や陳述書:同居していた兄弟姉妹の記録や、当時の接種状況に関する親族の詳細な陳述書。
- 母子感染排除のための母の血液検査:母親が存命の場合はHBs抗原・HBc抗体検査を行い、他界している場合は年長きょうだいの検査結果を提出。
厚生労働省との和解手続きは、単に書類を提出して終わりではありません。地方裁判所に訴状を提出した後、国の指定代理人(法務局・厚労省担当官)による極めて厳格な書面精査が行われます。血液検査の数値一つ、カルテの記載の一節に至るまで論理的な整合性が検証され、疑義が生じれば追加の医学的意見書や検査が求められます。この厳密な証拠主義こそが、一般の行政給付と異なり「裁判所を通じた和解」が必要とされる本質的な理由です。