「店頭からマスクが消えた?マスク品切れが続く一体なぜなのか」――この疑問に対して、多くの人が「工場の稼働停止」や「海外からの輸入制限」を思い浮かべがちです。しかし、経済産業省や一般社団法人日本衛生材料工業連合会の公開指標、ならびに卸売各社への取材を総合すると、国内工場の総生産ライン自体は前年同期比112%のハイペースで稼働を続けています。決定的なボトルネックは生産能力そのものではなく、需要の急伸時にサプライチェーン全体へ発生する物理的な摩擦にあります。
東洋経済オンラインなどの経済分析でも指摘されてきた通り、日用品の流通システムは「消費者が普段通りのペースで購入する」前提で極限まで在庫コストを削るジャストインタイム方式で組まれています。そこに季節性の感染拡大報道や花粉飛散警報がトリガーとなり、全国数千万世帯が「念のため1箱余分に買っておこう」と行動した瞬間、需要は通常の300〜400%へと跳ね上がります。卸業者の倉庫から各店舗へトラックで輸送できる配送枠には物理的な上限があるため、仮にメーカーに潤沢な在庫が存在していても、店頭の補充スピードが消費スピードに追いつかなくなるのが、今回のマスク品切れ理由の根幹です。
現在の市場動向をエリア別に見ると、首都圏や関西圏の駅前路面店において不織布マスク品切れが局所的に頻発している一方、郊外型の大規模ロードサイド店舗やホームセンターでは、サイズやカラーを選ばなければ一定数の陳列が維持されているという二極化が進んでいます。「どこにも売っていない」という言説は都市部の高回転店舗の光景がSNS上で増幅された側面が強く、流通の動脈そのものが完全に麻痺しているわけではありません。