ドラマ『青い鳥』を語る上で欠かせないのが、綿貫広務を演じた佐野史郎の凄まじい演技です。放送当時、その執拗な追跡劇と狂気的な形相は視聴者を震え上がらせました。
佐野史郎といえば『ずっとあなたが好きだった』の「冬彦さん」があまりにも有名ですが、本作における広務は、単なる異常人格者やステレオタイプの悪役とは一線を画しています。広務の行動原理の根底にあるのは、「どれほど権力や財力を持とうとも、妻の心だけは決して手に入らない」という絶望的な孤独とプライドの崩壊でした。
佐野史郎自身も後年のインタビューなどで語っているように、広務の異常な執着は「愛し方が分からなかった男の悲哀」の裏返しでもありました。ただ理森たちを憎むだけでなく、嫉妬に狂いながらも自らの無力さに苛まれる広務の人間臭い弱さを、佐野史郎が極限の緊張感をもって表現したからこそ、放送から数十年が経過した今も名演として語り継がれているのです。