ネット上のコミュニティやSNSに寄せられる自炊派の声をつぶさに分析すると、砂肝調理における切実な苦悩と現場のリアルな実態が浮かび上がってくる。
大手レシピサイトやSNSの投稿には、「生焼けが怖くて10分以上炒め続けたら、アゴが疲れるほど硬い消しゴムのような物体になった」「箸で触った感じは硬かったのに、切ってみたら中がドロっとしていて慌てて電子レンジに放り込んだ」といった失敗談が数千件規模で見受けられる。こうした失敗の根底にあるのは、「火の通りを確認する確固たる基準」を知らないことへの不安感だ。
一方、名店と呼ばれる焼き鳥店で修業を積んだ職人の仕事場を観察すると、砂肝の扱いには極めて緻密な計算が働いていることがわかる。
「砂肝は串打ちの段階で肉の厚みをミリ単位で均等に揃える。炭火の強火の遠火で、表面の水分を飛ばしながら遠赤外線で芯までじっくりと熱を届かせる。焼き上がりの合図は、串を持ったときの肉の引き締まり具合と、肉肌からプツプツと湧き出る透明な脂の泡だ」――ある老舗炭火焼き鳥店の店主はそう証言する。
西日本で「砂ずり」として親しまれている地域では、家庭料理としてニラやニンニクの芽と一緒に炒めるメニューが定番だが、ここでも主婦層の知恵として「薄くスライスしてから炒める」手法が自然に受け継がれている。厚みを減らすことで生焼けのリスクを物理的に遮断しつつ、強火でサッと炒めて歯切れの良さを引き出す生活の知恵だ。