太地喜和子は1943年、東京に生まれました。若い頃からその突出した美貌と表現力は際立っており、1959年に東映ニューフェイス第7期生として芸能界の門を叩きます。同期には三田佳子などが名を連ねていました。その後、本格的な演劇の道を志して文学座附属演劇研究所に入所し、日本の演劇界の巨頭・杉村春子の愛弟子として頭角を現していきます。
文学座において彼女は、『欲望という名の電車』のブランチ役や『薮原検校』、『近松心中物語』など数多の傑作舞台で主演を務め、杉村春子の正統後継者として劇団の屋台骨を背負う存在となりました。太地喜和子が舞台に現れるだけで空気が一変し、客席全体が官能と哀愁に包まれると評されたその演技は、今なお演劇評論家の間で語り草となっています。
映像の世界でも不滅の足跡を残しました。映画『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976年)で見せた芸者・ぼたん役は、シリーズ最高傑作のひとつに挙げられ、キネマ旬報助演女優賞を受賞。テレビドラマ『白い巨塔』(1978年・フジテレビ版)では、主人公・財前五郎(田宮二郎)の愛人であるバーのマダム・花森ケイ子役を好演し、知性と妖艶さを兼ね備えた大人の女性像を完璧に演じ切りました。