正義の多面性を鋭く描き出した代表例として、国民的漫画『ONE PIECE』に登場する海軍の描写が挙げられます。海軍将校たちが背中に背負う「正義」の文字や艦船に掲げられる旗は、秩序を守る治安維持の象徴です。
しかし作中では、一口に正義と言っても、赤犬(サカズキ)が掲げる「徹底的な正義」、青キジ(クザン)の「だらけきった正義(のちに燃え立つ正義)」、藤虎(イッショウ)の「仁義ある正義」など、キャラクターごとにその解釈はまったく異なります。特に赤犬のように「悪は根絶やしにせねばならない」とする過激な思想は、時に無実の一般市民すら犠牲にする冷酷さを生み出しました。
この構図は、現実の人間社会と驚くほど一致しています。「自分が信じる正義は、他者から見れば暴力になり得る」という視点が抜け落ちた瞬間、正義の旗は平和を守る防壁ではなく、他者を殲滅するための凶器へと変貌を遂げてしまうのです。