多くの人が気にも留めない日常の刺激に対して、なぜこれほどまでに強烈な不快感や疲弊が生じるのでしょうか。その根底には、発達障害の感覚過敏を引き起こす脳内メカニズムの特異性があります。
人間の脳は通常、目や耳から入る膨大な情報の中から「自分に必要な情報」を無意識に取捨選択(感覚ゲーティング)しています。しかし、自閉スペクトラム症と感覚過敏の関係を研究する脳機能画像診断の知見では、ASD当事者の脳内において感覚入力の抑制回路が働きにくく、あらゆる刺激が「最大音量・最大輝度」でダイレクトに脳幹や大脳皮質へ流れ込んでいる実態が報告されています。
一方で、ADHDの感覚過敏特徴は注意の制御機能と密接に結びついています。ADHDでは刺激に対する認知的抑制が効きにくいため、隣席のペンのノック音や衣類の擦れといった微細な刺激に注意が自動的に奪われ、脳が慢性的なマルチタスク状態に陥ってオーバーヒートを起こします。
さらに見逃せないのが大人の感覚過敏の理由です。子どもの頃は家庭や親の配慮で無意識に回避できていた刺激が、就職や進学を機に「オープンオフィス」「蛍光灯の明滅」「満員電車」「長時間の対面業務」といった過酷な環境に晒されることで表面化します。加齢や過労によってこれまでの代償戦略(我慢や無意識の緊張による適応)が限界を迎え、20代〜30代以降になって初めて日常生活が破綻するケースが目立っています。