水谷豊と伊藤蘭の間には、1990年9月に誕生した一人娘の趣里がいます。今や日本の映画・ドラマ界に欠かせない演技派女優として君臨する彼女ですが、その道程は決して平坦ではありませんでした。
幼少期からクラシックバレエに打ち込み、本場イギリスのバレエ学校へ単身留学した趣里でしたが、足首の剥離骨折とアキレス腱断裂という重傷を負い、バレリーナとしての夢を断念せざるを得なくなりました。深い失意のなかで彼女が見出したのが、表現者としての「演劇」の道でした。
水谷豊と伊藤蘭の教育方針で特筆すべきは、徹底した親子の「境界線(バウンダリー)」の保持です。多くの二世芸能人が直面する親の看板や事務所のバックアップに頼ることなく、趣里は自らの本名の下の名前のみでオーディションを受け続け、デビューから約7年間にわたり公の場で両親の名前を大々的に明かすことはありませんでした。
2023年度後期のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』で、2,400人を超える応募者の中からヒロイン・花田鈴子(福来スズ子)役を自力で勝ち取った際、父・水谷豊と母・伊藤蘭は「一人の表現者としての努力が実を結んだ」と誰よりも涙して喜んだと伝えられています。
娘が一人の女優として完全に独立した現在も、親子関係は非常に良好です。インタビューや特番において、趣里は「父はいつでも味方でいてくれる絶対的な存在、母はなんでも相談できる人生の先輩」と語っており、過干渉を避けつつ深い愛情で見守り続ける親子の理想形がそこにあります。