受診前や自宅療養中において、間違ったセルフケアによって病状を劇的に悪化させてしまうケースが後を絶ちません。現場で頻出する誤解と正しい対処法を明文化します。
① 「冷やす」は一時的鎮痛に有効、「温める」は絶対厳禁
熱感とズキズキする痛みを和らげるため、濡れタオルやアイス枕をタオルで巻いて患部を適度に冷やす(クーリング)のは有効です。しかし、お風呂に入って温めたり、温湿布を貼ったりすることは厳禁です。患部を温めると血管が拡張して血流が増加し、炎症が悪化するだけでなく、細菌が周囲組織や血管内へ急速に拡散する引き金になります。
② 市販の塗り薬(軟膏)で治そうとするのは間違い
薬局で購入できる市販の抗真菌薬や抗炎症軟膏、化膿止め軟膏を塗っても、蜂窩織炎は改善しません。病変部位が「皮膚の深層(真皮深部・皮下脂肪)」にあるため、表面に塗る外用薬では有効成分が届かないからです。治療には医療機関で処方される抗生物質の内服薬または点滴が不可欠です。
③ 患部を心臓より高く上げて安静を保つ
特に足に発症した場合、歩き回ったり下垂させたままでいると患部に血液やリンパ液が鬱滞し、腫れと痛みが著しく悪化します。ベッドやソファに横になり、クッション等を使って足を心臓より高い位置に保つ(挙上する)ことが治癒を早める必須条件です。
④ 抗生物質を投与しても「治らない」と感じたときの盲点
点滴や内服を開始しても1〜2日は劇的な改善が見られないことがあります。しかし、48〜72時間以上経過しても悪化し続ける場合は、投与している抗生物質が無効な耐性菌(MRSAなど)である可能性や、皮下に膿が溜まる「膿瘍形成」、あるいは深部筋膜に達する「壊死性筋膜炎」への進展が疑われます。処置の変更(切開排膿や抗菌薬の変更)が必要になるため、速やかに担当医へ状況を伝える必要があります。