インターネット上の議論や辞書の解説を巡って、「『配付』は常用漢字ではないため使わない方が良い」「新聞ではすべて『配布』に統一されている」という情報を見かけることがあります。この点については事実関係を正しく整理しておく必要があります。
まず、漢字の「配」「布」「付」はいずれも文部科学省が定める常用漢字表に掲載されている正規の漢字です。「配付」という熟語自体も一般的な国語辞典にすべて採録されており、誤用でも造語でもありません。
一方で、新聞社や通信社が準拠する記者ハンドブック(用字用語集)では、表記の平易化や文字コードの制約から「配布」に統一して表記する運用ルールを採用しているケースが多く見られます。新聞記事は不特定多数の読者に向けて書かれるメディアであるため、「配布」で統一しても実害が少ないという背景があります。
しかし、これはあくまでマスメディアにおける業界ルールに過ぎません。厳格な区分が求められる裁判所の判決文、各省庁の行政通達、地方自治体の条例・公用文、企業の公式文書においては、現在も厳密に「配布」と「配付」が使い分けられています。新聞のルールをそのまま社内文書や公的文書に当てはめると、かえって不自然な表現になるため注意が必要です。