運転免許センターの学科試験直後、SNSや質問投稿サイトには毎日のように悲痛な声が寄せられます。「二輪以外の自動車通行止めと書いてあるから、原付も通れないと思って×にしたら落ちた」「日本語のパズルすぎて頭が真っ白になった」といった体験談です。指定自動車教習所の指導員への取材でも、「仮免・本免を問わず、模擬テストでの誤答率が群を抜いて高い標識の一つ」として名前が挙がります。
なぜ、これほどまでに多くの人が罠に嵌ってしまうのでしょうか。背景には、道路交通法における「自動車」の定義と、日常会話における語感の致命的なズレが存在します。
一般社会において「原付バイク」はエンジンが付いた乗り物であるため、感覚的には「バイクの一種(=二輪の自動車の仲間)」、あるいは「広義の自動車」と捉えられがちです。しかし、道路交通法第2条第1項において、車両は以下のように峻別されています。
【道路交通法上の明確な区分】
・自動車(道交法第2条第1項第9号):原動機を用い、かつ、軌条若しくは架線によらないで運転する車であって、原動機付自転車、軽車両及び身体障害者用の車等以外のもの。
・原動機付自転車(道交法第2条第1項第10号):総排気量50cc以下(2025年4月以降の新基準原付含む)等の原動機を備えた二輪・三輪・四輪の車。
すなわち、道路交通法上、原付はそもそも「自動車」ではありません。「二輪の自動車以外の自動車通行止め」という標識は、「自動車」という大きな枠組みに対して網をかけているため、端から自動車に該当しない原動機付自転車は、除外規定を持ち出すまでもなく規制の枠外に置かれます。
認知心理学の観点から見ても、「〜以外の〜通行止め」という除外・否定が重なる二重構造の文章は、人間の情報処理に強い負荷(認知バイアス)をかけます。試験の極限状態において受験者の脳内では「標識に乗用車の絵がある=四輪車がダメ=二輪はいい=じゃあ原付はどうなる?=原付は二輪の自動車に含まれるのか?」という連鎖的な迷いが生じ、結果として誤答へと誘導されてしまうのです。