初盆が近づくと、ホームセンターや仏具店には家紋入りの白い提灯や、ナスとキュウリで作る「精霊馬(しょうりょううま)」が並びます。しかし、これらをそのまま浄土真宗の家庭に持ち込むのは典型的な誤解です。
浄土真宗で盆提灯を飾らない理由は、前述の「往生即身成仏」と密接に結びついています。一般的なお盆の習俗では、「あの世から帰ってくる先祖の霊が迷わないように、玄関先で迎え火を焚き、白い盆提灯を目印として掲げ、キュウリの馬に乗って早く帰ってきてもらう」という霊魂の往来を前提としています。しかし浄土真宗では、亡くなった方は常に阿弥陀仏の極楽浄土におられ、霊となって現世と来世を行き来することはありません。したがって、目印としての白提灯や迎え火・送り火、精霊棚(しょうりょうだな)の設置は一切行わないのが本来のあり方です。
提灯を飾る場合でも、霊を迎えるための白提灯ではなく、仏壇を美しく荘厳(しょうごん)して仏徳を讃えるための「絵柄入りの回転提灯」や「岐阜提灯」を一対飾るにとどめます。法要が終わった後に白提灯をお寺で燃やすといった儀礼も浄土真宗には存在しません。
また、同じ浄土真宗であっても、二大勢力である西(浄土真宗本願寺派)と東(真宗大谷派)では細部のしきたりに差異があります。浄土本願寺派大谷派の初盆マナーにおける主要な違いを整理すると、以下の点に集約されます。
まずお線香のあげ方ですが、本願寺派(西)では、線香を1本適当な長さに折って火をつけ、息ではなく手で扇いで消したのち、香炉の灰の上に横に寝かせます。一方の大谷派(東)も線香を折って寝かせますが、火のついた側を左に向けて置くなど所作に厳格な規定があります。さらに、仏壇に掛ける「打敷(うちしき)」の紋章も、本願寺派は「下り藤」、大谷派は「八ツ藤」または「抱き牡丹」を用いるなど、門徒としてのアイデンティティが調度品に反映されます。自家の所属派を正しく把握し、仏壇の荘厳を整えておくことが肝要です。