誰しも一度は、何者かに追われたり高所から落ちたりする悪夢にうなされ、汗だくで目を覚ました経験があるはずだ。一見すると悪夢は悪者に思えるが、進化生物学や神経科学の観点からは、極めて重要な生存戦略の一環だと考えられている。
悪夢とは言わば、脳が安全な空間で仕掛ける「危機管理シミュレーション」だ。現実世界で直面する可能性のある脅威やストレスに対して、あらかじめ夢の中で恐怖体験をリハーサルしておくことで、いざという時のメンタルな耐性を高めている。悪夢を見た翌朝に心がすっきりと整理されているように感じるのは、脳が夜のうちに試練を乗り越えるトレーニングを完了させた証拠なのだ。