循環の思想は、紫波町のもう一つの顔である「農業」にも波及している。紫波町は県内有数のぶどうやりんごの産地であり、古くから酒造り(南部杜氏の里)としても知られてきた。この伝統産業に新しい風を吹き込んでいるのが、若手農家や醸造家たちだ。
町の特産であるフルーツを活用したクラフトサイダー(リンゴ酒)や、ナチュラルワインの醸造所が次々と誕生。単に農作物をそのまま出荷するのではなく、加工とブランド化によって付加価値を高め、都市部の感度の高い消費層へ直接届けるチャネルが確立しつつある。
化学肥料や農薬に頼らないオーガニック農法への移行も急ピッチで進む。地元の学校給食に町内産の有機野菜を供給する取り組みは、子供たちの食育にとどまらず、農家の安定した出荷先を確保する経済的な仕組みとしても成功を収めている。生産者の顔が見える安全な食と、高い付加価値。この両輪が農業の持続可能性を支えている。