銀世界という表現のルーツを探ると、古典文学から近代詩歌に至るまで、雪を「白銀」「銀花」と見立ててきた先人たちの研ぎ澄まされた感性に突き当たる。雪そのものは無色透明の氷の結晶でありながら、複雑に乱反射する太陽光が人間の目に白く、時に冷ややかな銀色として映る。この光学的な妙を、古人は直感的に言葉へ昇華させた。
日本の純文学においても、雪は感情の機微を映し出す舞台装置として決定的な役割を果たしてきた。その頂点に立つのが川端康成の代表作『雪国』だろう。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」というあまりにも有名な書き出しは、視界が一変して雪景色へと突入する劇的な転換を見事に切り取っている。川端が描いた湿り気のある豪雪地帯の情趣は、言葉によって読者の脳裏に鮮烈な風景を刻みつける力を持っていた。