山口馬木也の真骨頂は、何と言っても長年の舞台や時代劇ドラマで培われた「本物」の所作と殺陣にある。現代の映像作品において、時代劇の経験が豊富な俳優の存在は年々貴重なものとなっている。刀の構え方、重心の置き方、着物の裾裁き一つをとっても、彼の所作には長年の経験に裏打ちされた無駄のない美しさが宿る。
ただ型が綺麗なだけではない。剣を交える瞬間の息遣い、刃が触れ合う音、相手の呼吸を読む間合い――。CGや派手な編集に頼らない生身のアクションが、スクリーンのこちら側に強烈な緊張感をもたらす。何十年もの間、愚直に演技と向き合い続けてきた泥臭い時間が、一輪の大輪となって満開の時期を迎えたのだ。