ネット上のQ&Aや歴史ファンの間で最も混同されやすいのが、新造吉原遊郭における使われ方です。「吉原の花魁(おいらん)も新造と呼ばれていたのだから、ご新造様は遊女のことなのか?」という疑問が散見されますが、これは明確な誤解です。
遊郭という特殊な社会において「新造」とは、高級遊女(花魁)の身の回りの世話をしながら芸事や作法を学ぶ見習い遊女や年季前の遊女を指す専門用語でした。主に以下のような階層が存在していました。
- 振袖新造(ふりそでしんぞう):15〜16歳前後の将来有望な少女。花魁候補として大切に育てられ、客を取ることは原則としてありません。振袖新造留袖新造の大きな違いは、この見習い身分と実稼働の差にあります。
- 留袖新造(とめそでしんぞう):年齢的に振袖を着られなくなった遊女や、花魁にはなれなかったものの客を取る実稼働の遊女。
- 引込新造(ひきこみしんぞう):容姿や才芸に優れ、特定の贔屓客が身請けを前提に囲っている見習い遊女。
- 太鼓新造(たいこしんぞう):容姿よりも芸達者で、宴席を盛り上げる幇間(太鼓持ち)のような役割を担う遊女。
一般社会における「ご新造様(若妻への敬称)」と、遊郭内の「新造(見習い遊女)」は、語源こそ「新しく整えられた身」という共通点を持つものの、使われる社会的空間と意味合いは完全に切り離されていました。一般の町で武家の妻を遊女扱いして呼んでいたわけではない点に注意が必要です。