葬儀の簡略化という文脈において、さらにラディカルな概念として議論を呼んだのが、宗教学者の島田裕巳氏が提唱した「ゼロ葬」である。これは通夜・告別式を行わないだけでなく、遺骨の引き取りすら拒否し、火葬場にすべてを委ねるという究極の形を指す。
島田氏の提唱は出版当時、社会に大きな衝撃を与えたが、墓石の維持管理が重荷となる「墓じまい」の急増と相まって、人々の死生観を根底から揺さぶった。死者を祀る場所への執着が薄れ、散骨や樹木葬といった自然還帰を好む層と共鳴しながら、儀式を行わない生き方・死に方はタブーから個人の尊厳ある自由意志へと昇華されつつある。