高畑勲監督による名作アニメーションとして名高い本作ですが、その原点にあるのは野坂昭如が1967年に発表し、新潮社から刊行された同名の自伝的小説です。原作とアニメ表現の間には、演出上の明確な差異が存在します。
野坂昭如自身が終戦直後に幼い義妹を亡くした実体験をもとに執筆された原作では、主人公・清太の葛藤やエゴイズムがより生々しく描かれています。アニメ版では、美しい蛍の光や清太と節子の深い兄弟愛が情趣豊かに描かれる一方で、原作の文脈を辿ると、終戦直後の混乱期における極限の飢餓と人間の冷酷さがより無慈悲に浮き彫りとなります。
名匠・高畑勲は、この小説をスタジオジブリの映画として再構築するにあたり、戦時下の日本人が持っていた空気感や日常の崩壊を恐ろしいほどのリアリティで再現しました。アニメ版で強調された叙情性の影に、原作が持つ強烈な贖罪の記録が潜んでいる点こそ、この作品の持つ二重の深みと言えます。