日本のイタリア料理界を牽引し、日本イタリア料理協会の名誉会長も務める巨匠・落合務シェフ。彼が長年訴え続けてきたのは、「特別な食材に頼るのではなく、身近な素材の力を極限まで引き出す」という調理思想だ。シェフの代名詞的なメニューの一つである「なすとガーリックのペペロンチーノ」には、その哲学が色濃く反映されている。
ニンニクの芽を取り除いて均一に香りを移す丁寧さ、鷹の爪を入れるタイミング、そしてなすの火の通し加減。どれも奇をてらったものではないが、基本を徹底することの凄みがそこにはある。日本の家庭で本格イタリアンが親しまれるようになった背景には、こうした巨匠たちの惜しみない技術開示と美学が存在する。