目の前に突如として障害物が現れた瞬間、人間の身体は本能的にレバーを全力で握りしめてしまう。これがいわゆるパニックブレーキだ。パニック状態での強烈な入力はタイヤのグリップ限界を容易に超え、一瞬でスリップ転倒を引き起こすリスクを飛躍的に跳ね上げる。
日本自動車連盟 (JAF) が実施した実証テストにおいても、パニック時に無理なステアリング操作と急制動を同時に行おうとした場合、制動距離が伸びるだけでなく車体の挙動が著しく不安定化することが確認されている。緊急回避における最善策は単純かつ明確だ。車体を垂直に立てた状態で全力かつ滑らかに制動力を立ち上げ、タイヤがロックする直前でブレーキをコントロールしながら回避ラインへアプローチすること。恐怖を抑え込み、視線を逃げ道へと向けるメンタルコントロールも過酷なバイクライディングにおける重要な回避術だ。