「日没を迎えた瞬間に周囲が真っ暗になる」わけではありません。太陽が地平線の下に隠れた後も、上空の大気によって太陽光が屈折・散乱され、地上に間接的な光が届き続けます。この現象を天文学および航空・航海用語で薄明(はくめい)と呼び、その継続時間を薄明時間と規定しています。
薄明は、太陽が地平線からどれだけ深く沈んだか(太陽高度)によって厳密に3段階に分類されています。
- 市民薄明(常用薄明・太陽高度 0°〜 −6°):日没直後から約30分間。屋外で本が読める程度の明るさがあり、街灯がなくても人の顔や障害物を明瞭に識別できる段階。
- 航海薄明(太陽高度 −6°〜 −12°):日没後30分から約1時間。地平線と海面の境界は辛うじて見えるものの、都市部以外の路上では人工照明が必須となり、1等星が肉眼で見え始める段階。
- 天文薄明(太陽高度 −12°〜 −18°):日没後約1時間から1時間30分。空に太陽光の影響がほぼ残っておらず、天文学的な夜空環境となり、暗い6等星まで観測可能になる段階。
また、意外と知られていないのが日没 方角の季節による大きなズレです。「太陽は真西に沈む」と信じられがちですが、太陽が真西(方位角270度)に沈むのは春分の日と秋分の日の年2回しかありません。
地球の地軸が約23.4度傾いている影響で、夏至の頃の日没方角は西北西(約290〜300度)まで北寄りに移動し、冬至の頃には西南西(約240〜250度)まで南寄りに傾きます。実に約50〜60度もの振れ幅があるため、富士山頂に太陽が重なる「ダイヤモンド富士」や、特定の建造物と夕日を重ねる構図を狙う際は、日没時刻だけでなく当日の正確な沈みゆく方位角の把握が欠かせません。