札幌でソフトクリームを巡る議論が絶えない最大の理由は、ひと口に「濃厚」と言っても、そのアプローチが店舗によって根本から異なる点にあります。観光客がイメージしがちな「生クリームや練乳を多用した重厚な甘さ」と、北海道の酪農関係者や地元ファンが絶賛する「生乳本来の力強いコクと爽快な後味」の間には、埋めがたい決定的な差が存在します。
その差異を決定づける第1の要素が殺菌温度と均質化(ホモジナイズ)処理です。一般的な市販乳や大量生産型アイスで使用される「120〜130℃の超高温瞬間殺菌」は、熱によってタンパク質が変性し、特有の加熱臭が生じます。対して、札幌近郊の名だたる実力店が採用する「63〜65℃・30分間の低温保持殺菌」は、生乳本来の繊細な甘みとビタミン、香りを損ないません。
さらに重要なのが、脂肪球を人工的に細かく砕かないノンホモジナイズ製法です。搾りたての生乳に近い状態を維持したソフトクリームは、口に含んだ瞬間に豊かなコクが広がりながらも、喉を通った後は水のようにスッと引く極上の後味を実現します。
第2の要素は、ソフトクリームフリーザーの構造です。空気含有率(オーバーラン)を綿密に制御できるイタリア・カルピジャーニ社製や国産ニッセイ社の最高峰機種を導入し、きめ細やかなシルクのようなテクスチャーを生み出しているかどうかが、名店と一般的なスイーツ店を分かつ境界線となっています。