社会現象となったコント「未亡人朱美ちゃん3号」は、単なるギャグの枠組みを超えたペーソス(哀愁)と狂気が同居する傑作として誕生しました。設定は、妻に先立たれた孤独な老人・細貝さんが、購入したアンドロイド「朱美ちゃん3号」に無理な要求を重ね、「いいじゃないの〜」「ダメよ〜ダメダメ」というやり取りが繰り返されるというものです。
このネタの原点は、衣装や小道具の買い出し先で見かけた廃棄マネキンや、地方都市の寂れたスナック街に漂う哀愁でした。ネタ作りを一手に担う中野聡子の偏執的なまでの人間観察力と、それを完璧な無表情とロボット特有の不気味なトーンで体現した橋本小雪の怪演が見事に噛み合い、爆発的な化学反応を引き起こしました。
しかし、2014年の流行語大賞年間大賞を受賞した直後から、過密スケジュールによる過酷な狂騒曲が始まります。1日に何本もの番組をハシゴし、前後の文脈を無視して「ダメよ〜ダメダメ」のワンフレーズのみを要求される日々に、2人は強い違和感と精神的摩耗を抱えていました。当時の特番インタビューや手記において、中野は「消費され尽くして空っぽになっていく恐怖があった」と率直に告白しています。