やっこさんを折る際、多くの人が抱く「そもそも“やっこ”とは誰なのか?」という疑問。そのルーツは江戸時代の武家社会における身分制度にあります。「奴(やっこ)」とは、大名行列や武家屋敷で槍持ち、挟み箱持ち、馬口取りなどの力仕事や雑役を担当していた身分の低い武家奉公人(供侍・武家僕)を指す呼称です。
彼らは主人の権威を誇示するため、大名行列の先頭で大股で威風堂々と歩き、独特の派手なパフォーマンスを行いました。その際に着用していたのが、袖が横に大きく張り出し、背中や胸元に白抜きの大きな四角い紋(釘抜紋など)が染め抜かれた「奴半纏(やっこばんてん)」です。折り紙のやっこさんが両手を左右に水平に広げ、四角い胸元をしている造形は、まさにこの奴半纏を着て胸を張る奴の姿をそのまま幾何学的にデフォルメしたものに他なりません。
江戸時代後期から明治時代にかけて、庶民の間でこのユーモラスかつ堂々とした奴の姿が親しまれ、お正月の風物詩である「奴凧(やっこだこ)」や伝承折り紙の題材として定着していきました。単なる架空のキャラクターではなく、当時の身分風俗と庶民の観察眼が生み出した、日本固有のポップカルチャーの原点ともいえる深い文化的文脈が宿っています。