エメラルドブルーやコバルトブルーと表現される別府弁天池の色彩は、人工的な着色や特別な鉱石の沈殿によるものではありません。この独特の景観を生み出しているのは、秋吉台に代表される美祢市のカルスト地形と、物理学的な光の散乱現象です。
秋吉台周辺の石灰岩層に浸透した雨水は、数十年の歳月をかけて地下の割れ目や洞窟を通過します。この過程で天然のフィルターによって極限まで不純物がろ過され、池に湧き出る段階では極めて純度の高い状態になります。池の底から湧き出る水量は毎分約11トン(毎秒約186リットル)に達し、池全体の水が常に急速に入れ替わっているため、藻類の繁殖や有機物の堆積が抑えられ、水深約4メートルの底部まで見通せる透明度が保たれています。
透明度が極めて高い水に太陽光が差し込むと、波長の長い赤い光は水分子に吸収され、波長の短い青い光だけが水分子や溶存する極微細な炭酸カルシウム成分によって散乱・反射されます。このレイリー散乱(チンダル現象の複合)こそが、人間の目に鮮烈な青色として認識される決定的な要因です。
日照条件によっても色の見え方は変化します。最も鮮やかなコバルトブルーを鑑賞したい場合は、太陽光が水面に対して垂直に近い角度で差し込む晴天の午前10時から午後2時前後に訪れるのが最適です。雨天時や曇天時は光量が不足し、やや深緑がかったトーンに変化する点も、自然現象ならではの特徴といえます。