クリスタルガラスのスペックを調べる過程で、多くの人が一度は突き当たる疑問があります。「鉛(ヘビーメタル)が含まれている食器を使って、人体に害はないのか?」という懸念です。
結論から言えば、国内外の公的機関(厚生労働省の食品衛生法規格基準や米国FDAなど)の溶出試験をクリアした正規製品であれば、日常的な飲食において健康被害を引き起こすリスクは極めて低いと実証されています。鉛は単に粉末として混ざっているのではなく、ケイ素をはじめとするガラスの強固な網目構造(ガラスネットワーク)の中に化学的に結合・固定化されているためです。
ただし、科学的な注意点が完全にゼロというわけではありません。数々の研究機関のデータによると、「酸性の強い液体を、数週間〜数ヶ月単位で密閉保存した場合」には、ごく微量の鉛が液体側へ溶出することが確認されています。そのため、以下のような使い方は避けるのが国際的な共通見解となっています。
- ワインやウイスキー、ブランデーを何ヶ月もクリスタル製デキャンタに入れたまま常温放置する
- 酢の物や果汁(レモン汁など酸の強い食品)を長期間保存する容器として使用する
- 乳幼児用のミルクや離乳食用食器として常時使用する
日常のディナーでワインを注ぎ、数時間以内に飲み干して洗うといった一般的な使用環境では、何ら恐れる必要はありません。しかし、近年の世界的な環境規制(欧州RoHS指令に代表される有害物質排除の潮流)や、製造現場で働く職人の健康保護、廃棄時の土壌負荷を減らすサステナビリティの観点から、酸化バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの代替ミネラルを活用した無鉛クリスタルガラス(レッドフリークリスタル)の技術が飛躍的に進化しました。
特にドイツのツヴィーゼル(ZWIESEL)が特許を持つ「トリタンクリスタル」のように、チタンとジルコニウムを配合して鉛同等の屈折率を再現しつつ、食洗機にも耐えうる驚異的な強度を獲得した新世代ガラスは、現代の星付きレストランやソムリエたちから絶大な支持を集めています。