お供え物選びにおいて、最も注意を払うべきは「悪気のないマナー違反」です。伝統的な宗教観や遺族への心理的配慮から、明確に忌避される品物が存在します。現場の寺院関係者や葬祭ディレクターへの取材でも、「遺族が処置に困惑するケース」として以下の品が挙げられています。
1. 四足生類・生臭物(肉や魚介類)
仏教全般において「不殺生戒(生き物を殺してはならない)」という戒律があるため、生肉や鮮魚、加工肉(ハム・ソーセージなど)を仏前に供えることは固く禁じられています。高級和牛のギフトセットや産直の海産物などは、いかに高価であっても慶事用であり、仏事の供物としては致命的なタブーです。
2. 棘(とげ)や毒、強い匂いを持つ花
供花を選ぶ際、バラやアザミのように鋭い棘がある植物は「怪我や血流、争い」を連想させるため避けられます。また、彼岸花のように毒性を持つ植物、ユリの仲間でも花粉が落ちて仏具を汚すものや香りが強すぎる品種は、閉ざされた室内で遺族の頭痛や体調不良を招く懸念があるため適していません。
3. 極端に日持ちしない生鮮品・要冷蔵の洋菓子
お供え物の果物は日持ちが重要視されます。熟れすぎた桃やイチゴなど、常温の仏前に数時間置いただけで傷んでしまう果物は避けるのが鉄則です。同様に、生クリームを多用した生ケーキやアイスクリームなど、冷蔵・冷凍保存が必須の食品は、ただでさえ香典返しや参列者の対応で冷蔵庫が埋まっている遺族の保管スペースを圧迫し、大きな負担を強いる結果となります。
4. 慶事を象徴する品(紅白・鰹節・昆布など)
縁起物とされる昆布(よろこぶ)、鰹節(勝男武士)、紅白の餅やお菓子は結婚式や出産祝いなどの慶事用です。不祝儀の場に持ち込むと「不幸を喜んでいる」と誤解されかねません。パッケージのデザインや包装紙の色味にも細心の注意を払いましょう。
5. 割り切れる個数や不吉を連想させる数字
菓子の詰め合わせなどを選ぶ際、4個(死)や9個(苦)といった忌み数は避けるのが作法です。基本的には奇数(3、5、7個)のセットを選ぶのが無難ですが、近年は個包装で12個入り、20個入りなど十分な量がある大箱であれば偶数でも過度に神経質になる必要はありません。