ネット上の音楽ファンの間でしばしば議論されるのが、「なぜタイトルが漢字の『有難う』ではなく、ひらがなの『ありがとう』なのか」という点です。ここには、水野良樹が追求した「ポップミュージックの公共性」に対する明確な哲学が込められています。
漢字の「有難う」は字義通り「有ることが難しい(奇跡的である)」という重厚なニュアンスを含みますが、水野は幼児から高齢者まで誰もが最初に覚え、日常で最も口にする「ありがとう」という平仮名の柔らかさを選びました。角を取り、誰もが気軽に手渡せる言葉にすることで、歌そのものを「社会の共有財産」として機能させる狙いがあったと読み解くことができます。
また、この曲を「単なる甘いラブソング」と解釈するのは早計です。歌詞の後半にある「いつまでも ただ ずっと あなたと歩いていけたら」という一節には、人生の不確実性や困難(病気や老い、日々の葛藤)を前提としたうえで、それでも手を携えて進むという静かな覚悟が込められています。