テレビ画面で見せる天真爛漫な笑顔と親しみやすいキャラクター。それが国民的スター・坂本九のパブリックイメージだった。だが、家庭での彼は、一層深く繊細な愛情を家族に注ぐ夫であり、父親だった。
柏木さんが大切に保管している手紙やメモには、多忙を極める仕事の合間に書かれた、妻や娘たちへの感謝の言葉が綴られている。時にはいたずらっぽい落書きを添え、時には「いつもありがとう」という素直な気持ちをストレートに伝える。表舞台の華やかさとは対照的な、日常の小さな優しさに溢れたこれらの手帖や写真は、まさに家族だけの宝物だ。メディアのカメラが捉えきれなかった素顔の「九ちゃん」は、誰よりも深く家族を愛し、守ろうとした優しい男だった。