手紙の形式は時代とともに柔軟に姿を変えてきた。かつて家族間の私信で「父上様」や「母上様」といった尊称とともに厳格な候文が用いられていた時代から見れば、現代の挨拶表現は大幅に簡素化されている。
文化庁が発表してきた国語施策や敬語の指針でも、形式主義に囚われすぎることなく、相手との距離感や状況に応じた適切な言葉選びが推奨されている。伝統的な儀礼は尊重されるべきだが、それが意思疎通の妨げになっては本末転倒だからだ。
とはいえ、伝統的な型が持つ「敬意の重み」が失われたわけではない。挨拶を省略する略式の手法が日常化しているからこそ、節目となる書状で正しい頭語と結語を使いこなせる人材は、組織の内外で際立った信頼を獲得している。