音楽ビジネスにおいて「引退歌手に印税は入らないのではないか」と誤解されがちですが、日本の著作権法および著作隣接権の枠組みを正しく理解すると真相が見えてきます。
一般的に、カラオケや放送で曲が流れた際に大きな配当を得るのは作詞家・作曲家です。日本レコード大賞を受賞した『喝采』であれば作詞の吉田旺氏、作曲の中村泰士氏に著作権印税が支払われます。しかし、歌唱者であるちあきなおみ本人にも、実演家の権利である「著作隣接権」に基づく歌唱印税や二次使用料が定期的に分配されています。
特に特筆すべきは、1991年にキリンビールのCMソングとして起用され爆発的なリバイバルヒットを記録した『黄昏のビギン』です。この楽曲は元々水原弘のオリジナルですが、ちあきなおみによるカバーバージョンが決定版として定着し、現在に至るまで多数のCMや映画、ドラマの劇中歌として採用され続けています。
レコード会社関係者の証言によると、テイチクエンタテインメントや日本コロムビアから定期的にリリースされるリマスター盤やCD-BOXは、積極的なプロモーションを行わなくともオリコンの上位に顔を出す定番商品となっています。さらに、定額制音楽配信サービス(サブスクリプション)の普及に伴い、昭和歌謡を愛好するシニア層のみならず、シティポップや本格派ボーカルを再評価するZ世代リスナーによる再生回数も急増しています。