人間の身体機能は、交感神経と副交感神経という対照的なふたつの自律神経によって24時間休みなくコントロールされている。危機や緊張に直面すると、脳は生物としての生存率を高めるため、瞬時に交感神経を優先モードへと切り替える。その結果、心拍数の増加や血圧の上昇とともに、唾液の分泌量と成分構成に劇的な変化が引き起こされる。
唾液には、水分に富んだサラサラとした唾液と、粘度の高いネバネバした唾液の2つのタイプが存在する。心身がリラックスしている最中は副交感神経の働きによって大量のサラサラ唾液が分泌されるが、交感神経が優位に傾くと粘着成分ムチンを多く含むネバネバ唾液へと切り替わり、全体の分泌量自体も急激に落ち込む。緊張した場面で口中が粘りついて会話が困難になるのは、まさにこの自律神経系のシフトによる物理的な帰結だ。