宝石愛好家の間で伝説として語り継がれるイイモリストーンとは、理化学研究所の名誉研究員であった理学博士・飯盛里安氏が、戦後に設立した「飯盛研究所」において生み出した特殊な人造鉱物結晶の総称です。日本における放射化学のパイオニアとして知られた飯盛博士は、ウランやトリウムなどの希元素鉱物研究で世界的な功績を残したトップクラスの科学者でした。
博士が人工宝石の研究に本格着手したのは、第二次世界大戦後のことです。日本の復興と平和産業への寄与を掲げ、天然資源の少ない日本から世界へ通用する高付加価値な結晶を生み出そうと試みたのが契機でした。人工宝石の歴史を紐解くと、ベルヌーイ法による合成ルビーやフラックス法によるエメラルドなど様々な試みが行われてきましたが、飯盛博士が目指したのは単なる既存鉱物の模倣ではなく、天然石の持つ複雑な結晶美を工学的に超越する独自の造形美でした。
飯盛研究所の高度な結晶育成技術によって誕生した石は、ガラスの内部に繊細な羽毛や孔雀の羽が幾重にも重なり合ったかのような、三次元的なアボレセント(樹枝状・羽状)構造を内包していました。その比類なき美しさは国内外の宝石界に衝撃を与え、世界各地の研磨職人(ラピダリスト)やコレクターたちを瞬く間に虜にしたのです。