テレビの全国ネットを通じ、彼女の圧倒的な親しみやすさと演技力が日本中に再認識されたのが、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)だった。ヒロインの親友の母親であり、米屋の威勢の良い女将・安部富役を演じた彼女の姿は、多くの視聴者の心に焼き付いている。
たった一行のセリフ、日常の何気ない立ち振る舞いの中に、昭和を生きる女性のたくましさと温もりを凝縮させて見せた。若い頃から舞台で培ってきた「空間を一瞬で支配する間(ま)の取り方」と「人間味あふれる表情の変化」は、朝ドラの茶の間に大きな笑いと感動をもたらした。まさに晩年の名演として語り継がれる仕事である。